サポート・ギタリストにSATOJIを迎え、ニューシングル「THRASH e.p」を引っ提げてライブハウスに戻ってきたレイザーズエッジ。復活までのスピードがここまで早かったことにも驚くが、最も驚いたのは、新曲にこれまでなかったメタリック/ハードロック要素が加わっていることだ。「レイザーズがメタルに!?」と書いてしまうと乱暴なのだが、彼らは何を思い、どんな意識を持って、このハードなリフから再出発することを決めたのだろうか。KENJI RAZORSへのインタビュー。実は危機的状況だったという20周年アニバーサリー・イヤーを超えて、21年目に向かうバンドの今をしっかり語ってもらった。


「いつ辞めんのか、いつが潮時か、ずっと考えてた」


一一まず、TAKAさんの脱退が発表されたのが昨年の10月でした。理由は本人がコメントした通りなんですか。


KENJI:そうですね。結局、バンド・リーダーである僕の至らなさで。ちゃんとやってるように見えてズボラなとこがいっぱいあるんですよ。そのストレスが溜まってたと思う。ライブをやるのは本人も全然好きなんですけど、バンドを続けてると、それ以外の部分で小さな積み重ねが出てきてしまって。それがしんどくなってきたのかな。3〜4年前から予兆はあったんですよ。だから本人に言われた時も「まぁ、そう言われたらそうやなぁ…」みたいな。



一一11年間。TAKAさんの存在によって音も変わり続けました。


KENJI:TAKAくんが入ってからは、彼のギターのニュアンスを大事にして、俺はラモーンズ的な曲を書くようになって。それで『THRASHING GOES LOVELY』(4th)はすごいポップになったけど、そこでも「なんか違う」っていう違和感がみんなの中に生まれてしまって。そこから戻そうとしたのが『SONIC! FAST! LIFE!』(5th)で、そのまま『RAW CARD』(6th)に繋がっていくんですけど。


一一『RAW CARD』は原点回帰みたいな作品だったし、次に20周年のベスト盤もあって、良くも悪くもキリのいいタイミングで活動が止まってしまった。


KENJI:そうそう。きっちゃん(KRASH)とMISSILEと「ほんとの話、これからどうする?」って何度も話して。俺、みんなも辞めるかなと思ってたんですよ。二人ともTAKAくんとほんと仲良かったし。あとMISSILEも子ども生まれたり、きっちゃんもゆくゆくは子ども欲しいって言ってるし。で、二人とも最初は辞めようとしたみたいやけど、二週間経って飲んだ時に「やっぱ、やりますわ」って。


(続けていくことを再確認し決意をしたとある夜)

一一あぁ、ここで解散という選択肢もリアルにあったと。


KENJI:ありましたね。僕ね、けっこう前から「いつ辞めんのかな?」「いつが潮時かな」ってずーっと考えてるんですよ。自分の体力とか曲を書くモチベーションを考えながら。ただ、結局はアホなんで、まだやれてないことがたくさんあるなと思ってギター持っちゃう。曲書いちゃうんです(笑)。あとメンバー二人も結局レイザーズエッジが好きやし、まだまだやれる、楽しみたいって思ってる。だから……やるしかないんですよね。辞めちゃうと人生が終わっちゃうっていうか。




一一こういう音のバンドで20年って前例がないことで。「いつ辞めんのかな」ってずっと考えていたと言いましたけど、具体的には?


KENJI:えっとね、最初に「あれ? もう曲書かれへんな」と思ったのがファースト出した後なんですよ。結成してたった5年くらいでしたけど、ほんと出し切ったなって。でもピザから(リリースの)話もらったお陰で「あ、もっとやったほうが楽しいかも!」って思えて。そこで頑張って書いたらオルタナティヴな感じになってきた。それで『RAZORS RISING!!!!』(2nd)ができたんですよ。そこからは「もっといろいろ取り入れたら面白いんだ」っていう方向になってきて。もともと僕、ハードコアへの憧れと共に、他の興味もあったんですね。ポップなのも好きだし、クラブで踊ったりするのも好きっていう。そこを分けて考えてたけど、一緒にしてもいいじゃんって思えたのがピザに行ってからで。お陰様でいろんな曲を書くことができたから。


一一今も、新しいものを取り入れていけば曲はすぐ書けますか。


KENJI:うん。実はものすごいストックがあって。それは2011年の震災以降、ものすごく悶々としてた時期にやたら宅録をしてたからで。今回のやつも当時のストックだったりするんですよ。だから、今のギターのSATOJIのメタル要素を取り入れながら作れば、新しいものを出せる自信がある。すぐにでもアルバム作りたいなっていう感じではありますね。

 



「新しさは求めてたし、続けるなら変化が欲しかった」



一一じゃ、そのSATOJIさんについて聞きますけど、彼は公募で?


KENJI:いや、結局公募で来た人が少なくて、あんまりピンと来なくて。いよいよここが潮時かぁって思いながら3人で飲んでて。「あの人どうすか?」「いやー、あの人飲んだら弾かれへんやん」「じゃあこの人は?」みたいな話をしてる中で名前出てきたのがSATOJIなんですね。彼は『RAW CARD』ってアルバムのミックスもしてくれてるし。


一一あ、ギタリスト兼エンジニアの方なんですね。


KENJI:そう。年は10コ以上離れてますけど、俺とは飲み友達で気も合うんですよ。「あいつしかおらん、あいつに頼んでみよ!」ってことになって。あいつはGOODBYE TO THE HEROってバンドをやってるし、昨年末にバンド全員で東京に引越してるんです。けど、もう東京にいるあいつを呼びながらやるしか道がないなと。どうせやるなら、ちゃんとした奴で、ギターも上手くて、レイザーズエッジにしっかり愛がある奴じゃないと。それで話したら「いいですよ、やりますよ!」って。しかもいきなり2曲も書いてきて。


一一驚きましたね。今回KENJIさんが全部作ってないんだって。


KENJI:ね! こいつ凄いなって思いましたよ。レイザーズエッジといえば俺の独壇場、ほぼひとりで曲書いてるリーダーがいるバンドで。そこに「うぃーす」って入ってきて、「KENJIさん、曲書いたんで使ってくださいよ」って言える感じが新しいなと(笑)。しかも僕が書かれへんようなリフを随所に入れてくるんですよ。ほんとにメタラーなんで最初は戸惑いましたけどね。でも合わせてみたら「うわっ、格好いいなぁ!」って思えたんで。あと実際ね、新しさは欲しかったんですよ。


一一それはそうでしょうね。何も変わらないよりは。


KENJI:うん。難波さんのバンド(NAMBA69)に新しいギターのコウヘイ君が入って、俺が言うのも失礼ですけど劇的に良くなったんですよ。「LOOK UP IN THE SKY」っていう曲でびっくりして、「これハイスタでやってもいいんじゃないか?」ぐらいに思ってたら、実は新しいギターが持ってきた曲だってサトジから聞いて。それを採用する親方の懐の深さに俺は感激したし、シンパシーを覚えて。しかも歌が乗ると完全に難波さん!っていう。僕も全部自分で作っちゃうほうですけど、今回はそこをポンと超えられた。ほんと、親方が新人のアイディアに「いいね、それ採用!」って言うみたいな。そっちのほうが格好いいなと思ったんですよ。実際バンドがグッとアガるわけやし。


一一ちなみにメンバー3人とも、メタルっていうジャンルやギターに対してはアレルギーなくやれるんですか。


KENJI:ないですね。きっちゃんもアイアン・メイデンとか好きらしいんですよ。僕も昔から大好きだし、メタリカとかスレイヤーとか中学の頃から聴いてて。でもそれと比べてもSATOJIはモダンなメタルだから、格好いいなと思いますよ。今までメタルって、やりたくてもできない、弾けないから出てこないものでしたけど、新しいメンバー入れて今から続けるなら、それぐらいの変化を求めてた。




一一オープニングが「LIVIN’ ON THE EDGE」で、あのイントロから始まるところに、新しいレイザーズを見せていく意思を感じます。


KENJI:そう、歌詞もそうですけど「崖っぷちから行くぞ!」っていう。ほんとTAKAくん抜けた時に「うわ、また崖っぷち来たな。レイザーズエッジ何度目の崖っぷちかなぁ」って思ったんですけど、でもお陰様で復活できたんで、この心境をちゃんと語ってから始めたいなと。ちゃんと語ると同時に、自分に言い聞かせてる部分も大きいですね。「KENJI、まだまだやるぞ!」って自分に言ってるみたいな。


製作:SATOSHI (TRASH ART WORKS)


一一〈崖っぷちと言う名のジャンプ台〉って歌詞がありますけど、KENJIさんって、そこにいることを楽しんでいるところもありますよね。


KENJI:そうですね。なんかね、不思議なんすけど、昔から……なんとかなるなぁっていう人生を送ってて。何とかなるんですよね。

 



一一……それ、TAKAさん入った時も同じこと言ってました。11年前に(笑)。


KENJI:はははは! なんとかなるなぁ~っていう人生(笑)。自分が大した人間じゃないくせに、結局は手伝ってくれる人とかサポートしてくれる人がいて、なんとかなる。ほんと不思議な感じですねぇ。


一一それを人徳と呼ぶんじゃないですか?


KENJI:人徳なんて全然ないでしょ(笑)。全然ないと思いながら生きてますけど。でも、そういう人たち集めて飲んでみたら面白そうですよね。バンドとか関係なく、会社とかでも、崖っぷちだけどなんとかなるなぁっていう人、意外といっぱいいると思う。それって結局キャラですよね。


一一うん。さめざめ泣くことを良しとしないタイプというか。


KENJI:そういう時に「うわぁぁぁ!」って頭抱えちゃう人もいっぱい見てきましたけど、俺は結局アホでポジティヴなんでしょうね。TAKAくん辞める時も、年末のパワーストックでTOSHI-LOWと朝まで飲んだんですよ。「お前これからどうすんだよ」って言われて「どうするも何も、おらへんしなぁ。TOSHI-LOWギターやる? お前最近ギターうめぇじゃん」「やんねえよ!」って(笑)。「この際、普通のギターじゃなくて黒人か子どものギタリスト入れようと思ってる」「いやいやキーボード入れなよ。ロカストみたいになればいいじゃん」「あっ、それは劇的に変わるな!」とか笑ってて。……結局、普通のギタリストじゃなくて、すごくメタルなギターが入るっていう今の流れになるんですけど(笑)。

 



「やれること、やりたくなること、これから増えていく」



一一そして、本気のメタルを感じるのが2曲目の「FOOL’S GOLD」。SATOJIさんの曲です。


KENJI:メタルですねぇ。でもちゃんとレイザーズエッジを意識して速いパートとか入れてくれましたね。あいつも自分のバンドではダウンビートの曲が中心ですけど、「レイザーズエッジといえば?」っていうところで、こういう曲をポンと出せるわけだから。ちゃんと書けるんだなぁって。今回もSATOJIがミックスしてますけど、たぶんそれ以前に『RAW CARD』をミックスした経験も大きいんでしょうね。ミックスするって、もうその曲の内部まで知るっていうことなんで。


一一この曲のメロディって今までにない感触ですよね。ドラマチックなリフに引っ張られて出てきたような。


KENJI:あ、それはありますね。曲はSATOJIが書いたけどメロディは自分が考えるんで。僕が昔やってたジェリーロール・ロックヘッズっていうバンド、ドラムが曲を書いてて、それに負けへんボーカルをどう乗せるかっていう戦いがあったんですよ。その感覚が久々にあった。SATOJIも「KENJIさん、どんなメロディ乗せてくるんかな」って思ってるだろうし、そこを超えていったろ、みたいな。だからメロディ考えるのがすごい楽しかった。「あ、これでもっと曲作ったら楽しいな」っていう感覚も出てきたし。なんか掴めた部分がいっぱいあった曲ですね。

 




一一そして3曲目が「MY WAY FOR MYSELF」。これはいかにもレイザーズ節の一曲で。

KENJI:なくてもいい、ぐらいのね(笑)。これだけすごい浮いてません? メタル、メタルときて、最後ハイブリットなメロコアって感じなのに、ここだけ突然80'Sハードコアみたいな。


一一いや、この曲があるから変わらない芯の部分が確認できる。そこも伝えたかった部分だろうなと思いますよ。


KENJI:うん。そうっすね。もちろん新しさは出したかったけど、今ある自分のストックの中で一番いい曲をと思って選んだのが今回の2曲だったし。あとSATOJIって自分が通ってきてないモダンなメタル世代なんで、そこを尊重しつつ、ロックンロールのロールする部分は絶対残しておこうと思って。


(とにかくロールする男、いや漢。ミサイル氏。)

一一最後に「DON’T BE WAITING」。これもSATOJIさんの曲ですけど、やっぱり感性が若いですよね。


KENJI:ほんとにそう。若さは武器やなって思いますよ。あんなリフ俺から絶対出てこぅへん。イントロから何から何まで。この曲って、AとBがあってサビが来て繰り返すみたいな、よくある展開じゃないんですよね。全部が一回しか出てこぅへんのに2分くらいある曲で。あいつも展開を説明しながら「ここでね、みんなに『回れー!』って言うんですよ」とか嬉しそうに言うんですよ(笑)。ライブのこと想定して曲作ってる。それは自分でもあることなんだけど、こいつのアイディアはほんと面白いって思いましたね。レイザーズが今までモノにできなかったメロコア感が、ここにちゃんと新しく出てる気がして。あいつのギターとアイディアがあるからやれること、やりたくなること、これから増えてくると思います。


製作:SATOSHI (TRASH ART WORKS)


一一今は、新しさが追い風となってどんどん次のヴィジョンが出てくる状態。


KENJI:うん。復活ライブではもちろん昔の曲もやったんですけど、SATOJIって(原曲の)まんま弾かないんですよ。随所になんか入れてくる。そこも新鮮で。お互い刺激受けながらどんどん新しいこと出していこうって感じで。しかもね、ポッと復活したばっかりなのに今年11月には東南アジアのツアーが決まって。面白いですよ、いろんなことが。だから……ほんと、なんとかなりますねぇ(笑)。


一一楽しみです。この体制でのリアレンジ再録ベストとかも聴きたいですね。


KENJI:あぁ~! しっかりアレンジ変えてね。今だったらアリですね、確かに。じゃあそれ、いただきで(笑)。




text : 石井恵梨子
写真:JON



  1.LIVIN’ ON THE EDGE
2.FOOL’S GOLD
3.MY WAY FOR MYSELF
4.DON’T BE WAITING

Produced by KENJI RAZORS

Recorded by Yori-kun at Red Hot Studio in June 2017
Additional Recorded & Edited by Koichi Hara
Mixed & Mastered by Nyse. s.w at Nyse Studio in June 2017


「THRASH e.p」はライブ会場、通販のみで購入が可能です。
500枚限定。
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